多少、春の兆しが感じられるようになった3月12日の新潟市。
お寿司屋さんで行われている「第十四会弥助小句会」にお邪魔しました。
昨年12月『句集 水惑星』を上梓された増田芳男様とお話をしているなかで、その句会の存在を知り、いつか行ってみたいと!
こちらは、元新潟大学教授の3名による句会。
まずは、近況を伝え合いながら、お寿司をつまみ一献傾ける。
采花「幹事のよしをさんが、そろそろ2人がやりたがってるんじゃないかなって私たちの心を読んで電話をくれるの。それが大体3ヶ月に1度、特に決めているわけではない」。
岳青「季節に合わせて、いかにも俳句的じゃないですか」。
私(木戸)「いい句ができたら、2人に呼びかけるんじゃないんですか?」
采花「いやいや、そんな下世話じゃないですよ」(笑)。
食事をしながら、最近(取材当時)のトランプとゼレンスキーの会談、石破総理の話など、話題に事欠かない。
その後、短冊に各人3句ずつ自分の句を書く。
4句選のうち、1句を特選に。
風呂敷に句集二冊と桜餅 よしを
◎采花、岳青 ※◎は特選
采花「句集二冊と桜餅を一緒に持っていた。いかにも俳句を楽しんでいる感じが、桜餅を入れたことでほんのりと伝わってきた。風呂敷に入れたなんて、岳青さんかと思ったけど」。
岳青「いやいや、僕は近代的な男ですよ」(笑)。
春泥や札幌駅で履き替へて 岳青
采花、よしを
「ひと昔前の札幌駅の辺りはどろんこ。学会に行くのに靴を履き替えたのでしょう」
岳青「木戸さんの父上は札幌に10年いた、だからどうしても札幌を入れたくて。挨拶句です」(木戸父と岳青さんは親交あり)
はこべらや水の惑星うごき初む 岳青
◎よしを、采花
よしをさんの第二句集『水惑星』上梓を祝って詠んだ挨拶句。
「日溜りに群生する〝はこべ〟から、いよいよ水の惑星である地球の春が動き出した、と。よしをさんの故郷、安塚は新潟の中でも豪雪地帯。今ごろは雪が溶けて、そんな時期じゃないかと想像して作った。ありがとう」。
よしを「これを採らないわけにはいかないでしょう」(笑)。
短冊はカレンダーの裏春句会 采花
◎岳青、よしを
今日の短冊が、古いカレンダーを利用したことを即吟した句。
「木戸さんが〝短冊はカレンダーの裏ですか〟と、写真に収めていた」。
「今日の今じゃなきゃできない句、これが俳句の妙味であり、すばらしいところ」。
四人居し一人は女性春句会 采花
岳青、よしを
いつもは年寄りの男三人の句会に、木戸が加わって楽しい句会となったことを即吟した句。
俳句はまさにその場限りのライブ。挨拶句の応酬、そして挨拶句は改めていいものだなぁ、と。
その方への敬意とウェルカム。歓迎され、ここにいていいのだという承認、安心感。
身内の介護などや些事もあり、なかなか一筋縄ではいかない日常。
そのようななかでも、この2時間は季節の料理と最新の話題、そして俳句を通じて一緒に時を過ごす、フルに五感の喜ぶ時間。
今を生きる者として昔を語るもよし、日常を詩にのせて味わい、違う互いを認め合う。
歳を重ねた方にしかわからない、豊潤なとき。
以前は句会の後にカラオケに行っていたこともあったというが、今はきっちり2時間。
89歳、86歳、83歳のお三方。いつとは知れぬ次回を約し、その日を楽しみにそれぞれの日常に戻っていく。
その姿はキュートであり、なぜだか胸がきゅっとした。